サワガニがいる川はきれいな川なのか──指標生物としての話
サワガニは「きれいな水にすむ生き物」として扱われることがあります。
ただし、そのまま「いる=きれい」とは言えません。
何を測っているのかを整理します。
指標生物とは
水質の目安として使われる生き物のことです。
・川にいる生き物の種類を調べる
・その組み合わせから、水質のおおよその段階を判断する
・小中学校の環境学習でも扱われる
水を化学的に測るのではなく、 【何が住めているか】から逆に推測する方法です。
これは実際に行われている調査です。
全国水生生物調査(環境省・国土交通省)
・1984年から続いている
・指標生物は【29種】
・水質階級は4段階
I … きれいな水
II … ややきれいな水
III … きたない水
IV … 大変きたない水
サワガニは、この「水質階級I(きれいな水)」の指標生物になっています。
ですから「きれいな水にすむ生き物」という言い方自体には、根拠があります。
問題は、そこから先の読み方です。
なぜ生き物で測るのか
ここが面白いところです。
水の検査 … その瞬間の水を測る
→ 測った日だけの値になる
生き物 … そこで暮らし続けられたかを示す
→ ある程度の期間の状態を反映する
一度だけ汚れた日があっても、 水質検査ではその日に測らなければ分かりません。
生き物は「住み続けられなかった」という形で残ります。
「いる=きれい」と言えない理由
ここが大事なところです。
① 水質だけで決まらない
→ 石があるか、隠れられるか
→ 水温が上がりすぎないか
→ 水が涸れないか
② 護岸工事の影響が大きい
→ コンクリート三面張りにすると、
水がきれいでも住めなくなる
③ 1種類だけで判断しない
→ 指標生物は【組み合わせ】で見るもの
→ サワガニ1種だけで結論を出さない
→ 調査でも29種を調べて階級を決めている。1種では決めない
④ いないからといって汚いとは限らない
→ 元々いない地域がある(→ [分布](/bunpu/))
→ 標高・水温・地形の条件が合わないだけかもしれない
③④は、とくに誤解されやすいところです。
サワガニが必要としているもの
水のきれいさだけではありません。
□ 石がごろごろしている(隠れ家)
□ 水温が上がりすぎない
□ 一年中、水が涸れない
□ 落ち葉などの餌がある
□ 岸に上がれる(→ [陸に上がる](/ishi/))
「水がきれい」は、そのうちの1つでしかありません。
「減った」と言われる理由
① 護岸工事
→ 石の下の隙間が無くなる
→ コンクリートの壁は登れても、隠れられない
② 水路のコンクリート化・暗渠化
③ 水が涸れる
→ 取水・地下水位の低下
④ 水質の悪化
⑤ 採集
→ 局所的には効く。小さな沢では影響が大きい
①②が大きいと説明されています。
「水をきれいにすれば戻る」という単純な話ではありません。
住める形の川かどうかが効いています。
だから、このサイトは場所を書かない
⑤に関わることです。
・小さな沢の集団は、数が限られる
・人が押し寄せると減る
・戻すつもりでも、傷めることがある
自由研究に使うなら
指標生物の考え方は、そのまま研究テーマになります。
・何種類いたかを記録する(サワガニだけを数えない)
・川の形を記録する(石があるか・護岸か)
・水温を測る
・上流と下流で比べる
「サワガニがいた/いなかった」で終わらせず、 【なぜそこにいるのか】まで書くと、研究になります。
→ サワガニの自由研究
まとめ
- **指標生物になっている。**環境省・国交省の全国水生生物調査の29種のひとつ
- **水質階級I(きれいな水)**の指標生物として位置づけられている
- 生き物で測るのは、そこで暮らし続けられたかを示すから
- 「いる=きれい」とは言えない
- 理由は水質だけで決まらない/護岸の影響/1種で判断しない/元々いない地域がある
- サワガニに必要なのは石・水温・涸れないこと・餌・岸。水のきれいさは1つでしかない
- 減った理由は護岸工事・コンクリート化・水涸れ・水質・採集
- 「水をきれいにすれば戻る」という単純な話ではない
- 自由研究なら何種類いたか・川の形・水温・上下流の比較まで書く
出典
環境省・国土交通省「全国水生生物調査」
水生生物調査とは
https://water-pub.env.go.jp/water-pub/mizu-site/mizu/suisei/about/way/text1a.html
こどものページ「水生生物による簡易水質調査」
https://www.env.go.jp/kids/water.html
令和6年度全国水生生物調査の結果(環境省 報道発表)
https://www.env.go.jp/press/press_05029.html
環境省 生物多様性センター「サワガニ」
https://www.biodic.go.jp/reports/3-1/k029.html
確認日:2026-08-26
この調査には、誰でも参加できます。
令和6年度は38,444人が参加しています(環境省の発表による)。
自由研究で川を調べるなら、この調査の方法が土台になります。