サワガニはどこまで分布しているか──北海道にいない理由

サワガニの生息地は、本州・四国・九州に広く分布するとされます。

日本の在来種であり、日本以外にはほとんど分布しないとされます。


北海道には自然分布しない

これがこの生き物を理解する鍵です。

正確に書くと:
  【自力では北海道に行けない】になる

「1匹もいない」ではありません。

近年、北海道で確認された例があります(2023年の研究)。 ただしそれは、人が持ち込んだ可能性が指摘されているものです。

このページで説明するのは【自力で行けない理由】のほうです。

理由として説明されるもの:

① 冬の寒さ

・サワガニは水温が下がると動かなくなる
・[冬は石の下などでじっとして越す](/toumin/)
・冬が長く厳しいと、越せない

② 海を渡れない

こちらのほうが本質的な理由です。

多くのカニ … 卵から出た子が【海でプランクトンとして漂う時期】を持つ
        → 海流に乗って広がれる

サワガニ  … その時期が【無い】
        → 卵から出たときには、もう小さなカニ
        → 海に出ない。出られない

→ サワガニの卵

つまりサワガニは、川づたいにしか広がれません。

海で隔てられた場所へは、自力では行けません。

北海道と本州の間には海があります。


ただし「絶対に海を渡らなかった」わけではない

ここは面白いところなので、正確に書いておきます。

2023年に発表された研究(信州大学・筑波大学・基礎生物学研究所) では、サワガニの分布の広がり方が遺伝子から調べられています。

分かったこと

 ・現在の生活史は【純淡水種】。プランクトンとして漂う幼生期を持たない
  → このページの説明は、ここまでは正しい

 ・ただし【非常に長い時間スケール】では、
   黒潮に乗って流された(海流分散)と推定される痕跡がある

これは「今日サワガニが泳いで海を渡る」という話ではありません。

何万年・何十万年という単位の、進化の歴史の話です。

◎ 言えること   … 1匹のサワガニは、自力で海を渡れない
✕ 言えないこと … 「サワガニは海と無関係な生き物だ」

「川づたいにしか広がれない」は、人の時間で見た話です。


この性質が生む面白いこと

川ごとに集団が分かれます。

・別の水系のサワガニと行き来しない
・地域ごとに、少しずつ違いが出る
・色の傾向が地域で違うことがある

→ サワガニの色はなぜ違うのか

だから、よそから持ってきたサワガニを 別の川に放してはいけないことになります。

その川の集団に、本来いなかったものが混ざります。

これは理屈の話ではありません。実際に起きています。

北海道での確認例(2023年の研究)

 ・サワガニは北海道に自然分布しないとされてきた
 ・それが近年、確認されている
 ・人が持ち込んだ可能性が指摘されている

自力では絶対に行けない場所に、います。

これが「放してはいけない」の、いちばん分かりやすい実例です。

→ 持ち帰る前に決めること


どんな場所にいるか

・山あいの小さな流れ
・湧き水
・田んぼの用水路
・石がごろごろした浅い川
・水がきれいで、水温が上がりすぎないところ

平地の大きな川の本流にはあまりいません。

→ サワガニはどこにいるか


標高

かなり上のほうまでいるとされます。

・沢の源流に近いところ
・湧き水のしみ出す斜面

水があって、石の下に隠れられて、 水温が上がりすぎなければ、そこにいられます。


「減った」と言われる

これも書いておきます。

・川の護岸工事(石の下の隙間が無くなる)
・水路のコンクリート化
・水質の悪化
・水が涸れる

サワガニは「きれいな水の指標」として扱われることがあります。

ただしこの言い方は注意が要ります(→ きれいな川なのか)。


自分の地域にいるか調べる

① 地元の博物館・水族館の展示を見る
② 自治体の環境調査の報告書
  → 水生生物調査が行われていることがある
③ 学校の理科の副読本・郷土の自然の本

このサイトでは具体的な場所を書きません。

採集で人が押し寄せると、その場所の集団が消えることがあります (→ 捕まえ方)。


まとめ

  • 本州・四国・九州に広く分布する。日本固有種
  • **北海道には自然分布しない。**理由は冬の寒さと、自力で海を渡れないこと
  • ただし近年、北海道で確認された例がある(人が持ち込んだ可能性)
  • **卵から出たときにはもうカニの形。**海でプランクトンとして漂う時期が無い
  • だから川づたいにしか広がれない
  • **川ごとに集団が分かれる。**地域ごとに違いが出る
  • だからよそのサワガニを別の川に放さない
  • 平地の本流より、山あいの小さな流れ・湧き水・用水路
  • **減ったと言われる。**護岸工事・コンクリート化・水質・水涸れ
  • 長い時間スケールでは海流分散の痕跡がある(2023年の研究)。 「1匹が海を渡れる」という話ではない

出典

出典何の根拠になるか
環境省 生物多様性センター「サワガニ」
https://www.biodic.go.jp/reports/3-1/k029.html
日本固有種/純淡水性/分布
信州大学・筑波大学・基礎生物学研究所
プレスリリース(2023年10月10日)

「生涯を渓流で過ごすサワガニなのに,『海流分散』の歴史あり!」
竹中將起・谷野宏樹・東城幸治
https://www.nibb.ac.jp/press/2023/10/10.html
北海道での確認例/海流分散の痕跡/系統
信州大学 理学部 研究紹介
https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/science/research/research/post-42.html
日本列島全域の遺伝子解析
確認日:2026-08-26

2023年の研究にはこうあります。

 「北海道には分布しないとされるが,近年,確認されている:人為分布の可能性あり」

このページで「自然分布しない」と書き分けているのは、これによります。


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